ケータイ小説 野いちご

【完】君しか見えない



微笑みながら楓くんを見つめていると、楓くんはふいっと目をそらすように再び視線をツリーに向けた。



「ほんっと腹立つよな、おまえ。
いつの間にこんなに生意気になったんだよ、十羽ちゃんは」



淡々と、でもどこか拗ねた調子で言われ、思わず慌てる。



「えっ、生意気だった!?」



「うん、そーとー」



や、やらかしたー!



気づかないうちに犯していた失態に、あたふたしていると。



「……十羽」



突然名前を呼ばれ、私はその呼びかけに答える。



「ん?」



やや間があって、楓くんは口を開いた。



「おかえり」



「え……」



掛けられた思いがけない言葉に、目を瞠る。



視線は交わらないものの、その声はちゃんと私に向けられていて。



「言ってなかったから」



「……っ」



……おかえり、かぁ。



なんだか、泣けてきちゃうね。



「ただいま」








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