微笑みながら楓くんを見つめていると、楓くんはふいっと目をそらすように再び視線をツリーに向けた。
「ほんっと腹立つよな、おまえ。
いつの間にこんなに生意気になったんだよ、十羽ちゃんは」
淡々と、でもどこか拗ねた調子で言われ、思わず慌てる。
「えっ、生意気だった!?」
「うん、そーとー」
や、やらかしたー!
気づかないうちに犯していた失態に、あたふたしていると。
「……十羽」
突然名前を呼ばれ、私はその呼びかけに答える。
「ん?」
やや間があって、楓くんは口を開いた。
「おかえり」
「え……」
掛けられた思いがけない言葉に、目を瞠る。
視線は交わらないものの、その声はちゃんと私に向けられていて。
「言ってなかったから」
「……っ」
……おかえり、かぁ。
なんだか、泣けてきちゃうね。
「ただいま」