学校までは自転車で10分。


駐輪場に自転車を停めると、すぐに耳にイヤホンをして大好きな男性ミュージシャンの音楽を流す。


途端にシャットアウトされた、外気からの雑音。


私はなるべく他人を視界に入れないようにと遠く前だけを見つめながら、自分のクラスがある2年3組へと向かう。


また今日もくだらない1日がはじまるんだと覚悟しながら。


私は自席に着くなり、読み掛けのミステリー小説を開くと現実逃避のために物語に集中する。


昔から勉強は嫌いだけど、本を読むのは好き。


次第に物語の中へと引きずりこまれ、流していた大好きなミュージシャンの歌さえも聞こえないくらい集中していた。


そのとき。


隣の席の男子、田口くんに肩を叩かれた。


田口くんはクラス代表をしていて、学年1の秀才。


おまけに端正な顔立ちをしているから女子から人気があるんだ。


田口くんは何かいいながら、しきりに前を指差している。


彼の長い指先をたどってみれば。


私を睨む担任の木村先生と目があってしまった。