「どうしたの?津田先輩と映画に行ってるハズじゃ……」



グスンッ、と。

最早雨か涙か鼻水かわからない顔を向ける。



「っ、だっ、だってね、津田先輩が……」


「竹川さん落ち着いて?ほら、傘」



子供のように泣きじゃくる杏奈に桜色の傘を拾い上げて雨から守る常磐君は、やっぱりとても優しいと思う。



「津田先輩がどうしたの?」



そう問いかけるわたしの視界の隅。


傘に見え隠れするダークブラウンの色が映る。