「え……」


シンが……?


「……っ、此処から出なきゃ!!」

「行きましょう、遥香さん!」

「うん!」


瞬時に危機を悟ったあたし達は、電話を繋いだまま部屋を飛び出した。

ドアの直ぐ傍には充くんが此処へ来た時に倒したであろう男が壁を背に倒れていて、起こさないよう足音を抑えながら男の傍を通り過ぎる。


「こっちです!」


先頭に立って道案内をしてくれる充くんに黙って着いて行くと、角を曲がって直ぐの所に出入り口らしき扉が現れた。


「十夜、もうすぐ外に出れそう」


取り敢えず出る前にそう報告して、一旦通話を終了させる。


ここからは気を引き締めて行かなきゃいけない。

だって、近くに居るのは十夜達だけじゃないから。ここまで来てアイツ等に捕まりたくはない。





「どう?」

「大丈夫です」


扉の隙間から外を確認した充くんが、まず先に外へ出て周囲を確認する。OKが出た所で遥香さんが先に外に出て、その後を追うように飛び出した。


目前に広がるのは、横並びに並んだ幾つもの古びたビル。

振り返って今出てきたばかりのビルを見上げれば、そのビルも他のビルと同様廃れていた。


こんな気味の悪いビル、無理矢理じゃなきゃ絶対入らない。怖すぎる。


「凛音さん!」

「あ、ごめん!」


出て直ぐに走り出したらしい二人が、角を二つ程進んだ所で立ち止まって手招きしていた。


急がなきゃ。

そう思って走り出したのとほぼ同時、


「凛音さん!!」

「凛音ちゃん!!」


目の前に居た二人が、叫びながらあたしに向かって手を伸ばしてきた。


「……っ」


傾いていく二人の姿。


「凛音ちゃん!」


いや、傾いてるのは二人じゃない。あたしの方だ。



……っ、やばい。


頭の中で警笛が鳴っているけれど、不安定な体勢じゃどうする事も出来なくて。


「……っ」


倒れないよう足を踏ん張るのが精一杯だった。