その遥香さんをもう一度見下ろせば、さっきと変わらず可愛らしい寝息を立てていて。


「……ごめんなさい、遥香さん」


思わず、そんな言葉が口から零れ落ちた。



あたしのせいで遥香さんを危険な目に合わせてしまった。


これ以上危険な目に合わせる訳にはいかない。


遥香さんだけは絶対に守らなきゃ。



「……さて、と」



その為には、今の状況を知る必要がある。



「取り敢えずあの窓に行かなきゃね」


縛られた両手と両足を上手く使い、窓際へと移動する。


普段プロレスごっこをしてるお陰なのか、縛られたままの状態でも簡単に立ち上がることができ、うさぎ跳びの要領で前へと進んだ。



……っていうか、こんなところ煌に見られたら絶対女じゃねーとか言われそう。





「よっと」


壁に身体を預けて窓から外を見渡すと、見知らぬ景色が視界いっぱいに飛び込んできた。


てっきり繁華街にあるビルにでも閉じ込められてるのかと思ってたけど、どうやら違ったらしい。


繁華街とは程遠い街並みに「うーん」と首を唸る。


県内の人間だったら何か気付くんだろうけど、残念な事にあたしは県外から来た人間で。


このN県で分かるのは自宅周辺と繁華街、それと、鳳皇の倉庫周辺ぐらいだ。