そう潤に言われて、確かにそうだな。と大人しく脱走は諦める。


ここであたしが余計な動きをして事を荒立てでもしたら、潤に葛原の怒りの矛先が向く可能性もある。


それだけは避けたい。


今にもこの暗くて凍えてしまいそうな場所から飛び出したい気持ちを押し殺して、あたしはその場に膝を抱えて座り込んだ。



潤に目をやると、まだ目を瞑っている。


口からは呼吸と共に白い息が吐き出されては消える。



いくら厚着をしてたって、やっぱりジャケットなしじゃ寒いよね。



あたしは、潤の隣に座り直して、ピタッと肩をつけると、貸してもらった大きなダウンを潤とあたしで半分ずつ掛けた。


潤は目を開けると、少し照れた顔で、


「いいのに。」


と言うけど、あたしは、


「この方が温かいよ!」


と言って、ニカッと笑ってやった。