「蓮……」


それは、長いようできっと短かった。

きっと、刹那だった。



だけど、ずっと見つめあっていたような気がしていた。

ずっとずっと、綺麗な銀を見つめていた。



だから。

そんな気がしたから、拒まなかったんだと思う。




「結局。溺れてるのは、俺の方――」




掠れた声、切なげな銀の瞳に。

まるで吸い込まれるかのように、キスを受け入れた。


拒否なんて選択肢は、あたしにはなかった。




蓮はゆっくり唇を離すと、今度は正面から抱きしめてくる。

蓮もお風呂に入ったようで、男用の藍色の浴衣がはだけて覗かせている胸板に顔を押し付けられる。

それに嫌な気なんで全くしなくて、応えるように蓮の背中に手を回した。


「蓮、ごめんね」


すんなり、というよりもいつの間にか言葉が零れていた。


「あぁ」


何がごめんなのかは言う気もなかったし、蓮も聞かなかった。

過去にどれだけ固執しても何も変わらないことはあたしがよく知っていたから。

蓮も、聞いたってあたしが答えないとわかっていたんだと思う。


それからしばらく、あたし達は抱き合っていた。