「…怜、ありがとう。この感情は私が処理しないといけない気がして。でも、一人では無理だと思ったらあなたに頼るわ」

 憂いを帯びた表情で彼女は言う。

 その姿にしばし見惚れた。

 「…無理だと思わなくても俺に頼れ」

 お前は人に頼ることが苦手なんだから、何も考えずにまず頼れ。

 そう言うと彼女は嬉しそうに笑った。

 「ふふふ。難しい要求をしてくるわね」

 「ふっ…そんなに構えなくていい」

 「じゃあ、どうすればいいの」

 「悲しい時に悲しいと言え、辛い時に辛いと言え。それだけでいい」

 「『それだけ』?『それほど』の間違いね」

 「カロッサは頼ることを知らないからな。そう思うのも当然だが……人に頼るのも案外悪くないぞ?それに、人は一人では生きていけないからな」

 「哲学的な内容になってきてるわよ」

 「はぐらかすなよ」

 「そんなことしてないってば。とにかく、善処するわ」

 「『善処』ねぇ……。都合の良い言葉を使う」

 「日本人ぽくなってきたでしょう?」

 「おやおや」

 「ふふふふ」

 「ははっ……」

 いつの間にか、重い空気は払拭されていた。