すると蒼太は少し寂しそうな表情を浮かべ、何も言わずにあたしから身を離した。


「……ごめん。嫌だった?」


眉をハの字にゆがめてそう聞いてくる蒼太。


「い、嫌とかじゃなくて。あたしこういう経験をしたことがないから、どうしたらいいかわらなくて!!」


慌てて、早口で誤解を解く。


「……本当に?」


「本当だよ」


コクコクと頷いて見せると、ようやく蒼太は笑顔を浮かべた。


その笑顔にホッとするあたし。


彼氏としての人形だから、当然イチャイチャするサービスもついているようで、この先心臓がもつのかどうか少しだけ不安に感じた。


しかし、それから颯太はあたしとある程度の距離を保ったまま、会話を続けた。


それは今日のデートについてではなく、勝手に作られインプットされているあたしたちの記憶だった。


蒼太の中ではあたしたちは高校入学と同時に付き合い始めた、周囲も公認のカップルという設定になっているらしかった。