光の代わりに、現れた人。


思わず、眉間にしわを寄せてしまう。


暗くて男か女か判断がつかないが、何故か、心臓が早鐘を打っていくのが分かった。


いけない、任務中であるというのに……集中しなければ。


胸をさすりながらじっと見据えていると、その華奢な体は起き上がり、周りをきょろきょろと見回した。


今は任務中。


すなわち、必要であらば敵を捕縛するか、副長に知らせる。


今の俺は前者を取った。


敵は一人であり、辺りは真っ暗。


月明かりが僅かに雪を照らしている。


俺が無意識のうちに殺気を出すと、その体は一瞬びくっと縮まり、やがて戦闘態勢になった。


敵の片手には、二つ苦無と思われる物が握られる。


まさか……忍か?


一瞬疑うが、きっとそうだ。


向こう側からも、相当な殺気を感じ取れるから。


シャキ、と苦無を三つ片手に持ち、全て一気に敵に向けて投げつける。


が、敵は相当な腕の持ち主のようで、三つとも掴みとった。