やっぱりそうだった。
あの後ろ姿。


まさかとは思った。

だけど、あんなに色気振りまいて、颯爽と歩く人は伊織しかいないと思った。


180近くある身長と、長い手足。
芸能人だと間違ってもおかしくないぐらい。


「伊織っ!」


私は伊織に慌てて駆け寄る。

ちょうど帰ろうとしてたとこだ。
自転車を取ろうとしたら、塀の奥に見たことある顔が横切った。


自転車を取ることを忘れて、私は無我夢中で走ったの。


「……………」


伊織は目を真ん丸にして、私を見ている。


和は今日も部活だから、私は一人。
新聞部も、記事を書き上げた私は帰宅組。


「…い、ずみ」


絞り出したような声に、胸の奥がきゅうんとなる。


この1ヶ月、どうやったら伊織に会えるかずっと考えた。
本当に忘れようとした。


だけど、無理だったんだ。