「うん、うん、今から行くわ。ちょっと待ってて」


私といた時とは天地の差があるぐらい柔らかい物腰。

………伊織はこの人を大事そうにしてるのは。




好きだからじゃない。



客だからだ。




電話を切った伊織は、至って普通に。

「わり、今から行くから」

そう、言いのけてしまうのは。
やはり私を何とも思ってないから。



大事に扱われたりもせず。
だからと言って、恋愛対象なわけでもない。

客でもなく、恋人でもない私と伊織の関係って何?



月3万でも支払うならば。


やっぱり客なの?



「…わかった」


「…あ、おお、またな」


伊織はさほど私を気にも留めず、去って行くんだ。
あの女の元へ。