電話をかけると、5コールぐらいで先輩の声がした。
その声は酷く眠そうだ。



「おはよーございまーす」


「んー…………浜田か、その声」


あ、浜田は私の名字です。



「そうでーす、中島先輩寝起きですか?」


「あー寝起きー」


「駅前映画館集合でーす」


「は?ちょ、まじ無理!今日彼氏と約束があるし」


「何言ってるんですか、新聞部の後輩がネタ集めるために映画館前に一人で張ってるのに?」


「ま、まじで?」


「まじです」


「何ネタにすんの?」


「メイちゃんと、斉藤先輩の交際」


「あーそれね」


「知ってたんですか?」


「私を誰だと思ってんの」


「うひゃー怖い」


「はいはい、わかった、とにかく二時間だけだからね!」


笑いながら、私は映画館前に視線を移す。

それを見た瞬間。
呆れた先輩の声なんか、耳を通り抜けていた。


「え?」


「え、じゃないよ、浜田、今から行くから浜田のいる場所は?」


「ちょ、先輩!後でかけます!」


「は?え?」



先輩が言い終わる前に私は携帯の電源を押していた。