「………」


「………」



競技場がざわめきだす。


というのも…あたしも柏木君も何もせず、お互いの様子を見ているから。

お互いに杖を構えたまま相手の出方を伺っている。


しかし微かに息を吸う音が聞こえた。


何か、来る…


あたしは杖を握る手に力を入れた。


「"アイス・グラウンド"!」


柏木君の合図で、氷が勢いよく地面を這うようにこちらに向かってくる。

そのスピードといい、温度といい、高校生がこんなことできるのかと疑ってしまうほどに完璧。


柏木君、なかなかやるね。



「"フライ"」


バサッと音を立てながら、あたしは翼を背中から生やして空に浮かんだ。





その時なぜか観戦席から、


「て、天使…」

という声が聞こえた。


え?どこに天使がいるというの?

思わず余所見をしそうになった。

っと、今は戦いに集中しなくちゃ。