本当は、気になる。
めったに表情の変えることのない彼女が
、こうも敏感になるほどの"過去"。
きっとそこに、彼女の全てが詰まってい
るから。
「俺にも知られたくない過去は、あるか
らね」
思い出すのも、忌々しいほどの。
「それを棚に上げて、麗ちゃんの過去を
むやみに暴こうだなんて、思ってないよ
」
そう言うと、何かを探るように、麗ちゃ
んは俺を見つめてきた。
「……知られたくない、過去って……」
「麗ちゃんの過去を俺が知らないのに、
麗ちゃんが俺の過去を知るのはフェアじ
ゃないよ」
にっこりと、牽制するようにそう言うと
、麗ちゃんが目を伏せる。
「そうね……ごめんなさい」
そう安易に、俺は過去を喋らない。思い
出すのも、煩わしい。
きっと、俺が麗ちゃんに過去を話すとき
が来るんだとしたら。
それは、俺が君に絶対的信用をおいた瞬
間だろう。