ケータイ小説 野いちご

羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》




そして青年は、女の肩を強めに押して倒した。

ほっそりとしているようだが、やけに力が強い。

軽く押されただけで、女はベットの上に転がってしまった。


「豚顏のおじさんについては、よく知らない。
けれど童貞なら知っているよ。
身近にいるからね」


青年の言いようは嫌味ったらしい。

しかし、同時に親しみを持っている風でもあった。


「え?まじー?
やっぱやだよね、童貞って。
下手くそだし、緊張しまくりだし、ホントきもい」


押し倒されたままの体勢で、女は、そうほざいた。


「相手が年だとそうなるけどね。
……うざいのに変わりはないけど」


青年の脳裏に何がよぎったのかは定かではないが、とにかく、彼はその瞬間、ひどく悲しげな顔つきになった。


そしてなんの前触れもなく、女の、露出度の高い服に手をいれた。

それが滑らかな身体を北上していくと、急に女の身体が跳ねた。


「やっ……!」


女は紅潮し、声をあげる。

慣れていることなのに、青年の手が動くたび、女の身体が激しく動いた。


「じっとして」


覆いかぶさるように、青年は上から言った。

美しい唇が弧を描く。

細く、形の良い指が、身体の上を縦横無尽に這う。

豊かな胸の膨らみを撫で、その頂の飾りを摘み、谷間に指先を伝わせる。

その手は腹に南下すると、次はその腹を触る。

女の喘ぎ声が耳元で聞こえるが、青年は、さして快感を覚えたようでもなかった。

その間、暇な左手で、青年はズボンのポケットからあるものを取り出した。


札だ。


紅い文字で、なにやらわけのわからない漢字が記された札である。

それを、行為に夢中になっている女の背に、撫で回す振りをして貼り付ける。



そこで、青年はいったん女の上から退いて、ベットから降りた。


「どうしたの?まだ全然だよぉ?」


女は、自分がわけのわからない札を貼られたことに気づいていない。

青年は苦笑した。





< 72/ 405 >