毎日、失恋のカサブタを強引に剥がされたその場所に、新しい傷をつけられてるようなもんだよ。


しかもこれがまたツラいことに、悲しいからって泣くに泣けないんだ。


泣いてるところをお姉ちゃんに見つかったらと思うと、おちおち涙も流せない。


だから休み時間とか放課後とかを利用して、ここに来て気が済むまで泣いているんだ。


泣いてるあたしの隣には、花梨ちゃんがいてくれるし。


「花梨ちゃん、いつもありがとうね。今日はもう大丈夫だよ」


校舎越しのグラウンドの方から、運動部の威勢のいい掛け声が聞こえてくる。そろそろ部活が始まる時間だ。


花梨ちゃんが入部したソフトボール部も、練習を開始しているだろう。


「花梨ちゃんには、ここんとこ毎日部活サボらせちゃってるし。さすがに今日は部活に行って」


「いーのいーの。ちょうどサボリたかったから」


花梨ちゃんはそう言ってくれるけれど、新入部員がサボリ続けていたら立場が悪くなる。


これ以上迷惑をかけたくない。


「あたし、だいぶ元気になったし本当に大丈夫だよ。だから部活に行って?」


ヘラヘラ笑うあたしを、花梨ちゃんは黙って見つめている。


どうしようか悩んでいるみたいだけど、あたしの気持ちを察してくれたようで、ようやく腰を上げた。