(と・・・言う事は)

 明道はぎょっと目をむいた。


「私よりもがぜん年下ではないか!」

「あほうじゃな。なぜそれに気付かぬ」

「い、いや、それは・・・」

 
 顔もふけていた上に自分よりも身長が高かったから、とは言えず、明道は「そういえば」と話題をそらした。


「私を、殺すのではなかったのか?」

「ああそれか。それならやめた」

「なぜ?」

「お前を殺しても俺には金子以外の利益がない上、ちと不都合があると思うたからじゃ」

「不都合とは」

「それは言わぬ。言いたくない」


 ベッと舌を出して言うと、天冥は立ち上がり湯気の沸く鍋から粥を椀によそった。


「ん」

「これは・・・」

「食え。粥じゃ」


 見た所、雑穀米の強飯(こわいい。ぱさついている)をふやけさせ、その上に荒塩をかけただけのようだ。

 雑穀米の強飯は、平安時代では一般的に庶民の食事とされていた。