烏帽子をとり、髷を外す。

 赤毛の混じった茶髪が、薫風に煽られて揺れた。

 肩より下の辺りで、定期的に無造作に髪を切ってしまっているので、周りの貴公子のように伸ばしっぱなしにするわけではない。

 そういえば。


(あいつは・・・この髪色がいいと言うてくれたような)


 思い出したように考えるが、すぐ我に返った。

 首を勢いよく左右に振る。


「・・・すまん、莢」


―まだ、お前のことを忘れることが叶わない。

―こんな外道に覚えていてもらっても、お前は、嬉しくないだろうに・・・。


 もし文を書いてそれが莢に届くのならば、そう書いて送ってやりたい。


 どんなに罵られたっていい。

 どんなに悲しまれたっていい。

 どんなに周りから非難されてもいい。


 ただ、莢に自分の中にある言葉を伝えたかった。

 莢を忘れることができぬ事を、謝りたかったのだ。