第一あたしが此処にいるのは空に元凶がある。
 

晴れて正式な恋人、両想いになったのだからキス以上の進展を望もうとあれやこれやそれやどれや行動を起こしているというのに、毎度の如く空が逃げてしまう。


逃げれば追い駆ける、それが攻め女の性分であるからして、逃げるキャツを何処までもどこまでも追い駆けて此処にいるわけなのだが。


逃げ場がないと悟るや否や、空はあたしに常識を説いた。

まったくもって生意気な奴だ。


まあ、そこもいいのだが。
 


う゛うっ、壁に背を押し付けて逃げる隙を窺う空。

 

まだ逃げられると思っているんだろうが、ふふっ、此処に逃げたが運の尽きだったな。


にやり、あくどい笑みを浮かべるあたしは、脇を擦り抜けて逃げようとするキャツの腕を掴むとそのまま最奥の洋式トイレの個室に押し込んで鍵を掛けた。


「イ゛っ」潰れるような悲鳴を上げる空は逃げ場を失って千行の汗を流している。


逃げたくても出入り口はあたしが占領しているから挙動不審気味。


ははっ、追い詰められてる、追い詰められてる。



「せせせせ先輩、個室に御用なんて俺等…、な、ない筈っすよねぇ。ほっらぁ一緒に此処から出て、えーっと、ケータイ小説のお話でもしましょう?」

「うむ。後でゆっくりしような。今は、そうだな。もっと大切な事をしようか」
 
 

完全に場の空気を読んでいる空は、「今はちょっと」気分的に乗らないな、なーんてしどろもどろ焦点を泳がせている。



ではそういう気分にさせるまでだ。


なあ?