宿舎に戻り、あれこれと用事を済ませて消灯。

暗くなるのを待っていたかのように、布団の中で話し始める綾香と美紀。


「藤崎くんに言ったよ。でね、オッケーもらったよ。」

美紀が嬉しそうに言う。


「私もね、上原に告ったよ。」

「どうだった?」



「うん、付き合ってくれるって。」


付き合うって?
綾香と?

心が震える。
私、泣きそうだ。



「結は?」


「えっ、あ、私?私は…。」


なんて答えて良いかわからない。

なかなか話し始めないでいると、綾香が代わりに話し始める。

「矢島は結に告白しなかった?あいつ、結のことずっと好きだったみたい。」


「あ、…うん。」

「今日の朝、矢島にね、結が誰のことを好きなのか教えろって言われてね。矢島が好きらしいよって言っといた。」


「えー、じゃ、結も両思いじゃん!」

美紀が私の肩に手を回して、引き寄せる。

「良かったねー!じゃ、付き合うんでしょ?」

美紀の声は弾んでいた。

「両思いなんだから、付き合うに決まってるじゃん!」

綾香が答える。

いえーいって言いながら、小さくハイタッチする二人。


こうして私は、自分の意思とは裏腹に、矢島くんと付き合うことになってしまった。




もう、なんでもいいや。
どうせ、上原くんは綾香と付き合うんだし。


「私、ちょっとトイレ。」


はしゃぐ二人のテンションにはついていけない。

私は先生に見つからないように、ロビーに向かった。