放課後帰宅しようと靴箱に出た雪美に、咲がいっしょに帰ろうと声をかけてきた。
こんなことは入学以来初めてのことだ。


ある程度、雪美には察しはついていたが、話をきくとやはり中井の姉の事故の話だった。


「中井先輩が朝、説明してくれて謝罪してくれましたよ。
それで、次の委員会の後お詫びにらーめんおごってくれるそうです。」


「えっ・・・そんな話になってたの?」


「まぁなりゆきで・・・。えへへ。」



「ふ~~ん。言っておくが、俺は今度の休みにはおごれないからな。」



「そんな意味で話したんじゃないのに。
わかってますよ・・・。

それに、私が咲の服を選んであげる方なんだから!
お父さんを見習って、今は我慢なんでしょう?

10年後にでもお高いものをおごってもらいますから。うふふ。」


「わ、わかったよ。10年後を驚くなよ。
すげぇ高いもん、食わせてやるからな。」


2人がバス停に差し掛かったところで、長身の男に声をかけられた。


「ねぇ、彼女。大賀山高校の生徒かい?」


「はい、そうですけど・・・。」


「君の歩いてきた方向へ行けば高校にたどり着けるのかな?」


「ええ、1本道だからずっとまっすぐいけば高校がありますよ。」


「そう、ありがと。・・・赤毛がとてもきれいで似合ってるよ。
じゃあな。」


そういって男は高校へ歩いていってしまった。


「新しい先生かな?」


「まさか・・・ねえ彼女~って時代遅れなのかチャラいのか・・・。
あんなのが先生で問題でも起こされたら、生徒会の仕事が忙しくなる!」



「そう?でも見た目はけっこうイケてるみたいだし、女の子には人気出るんじゃないかな。
若い男の先生ってうちの学校は珍しいし・・・。」



「好みか?」


「わ、わかんない・・・。私は見た目だけでホイホイついていくようなコじゃないから。」


「ついてはいかないけど、赤い髪の毛と見た目でホイホイ連れていかれてしまうけどな。あははは」


「もう、咲ってば・・・ひどーい!
私にとってはどうなっちゃうんだろうって怖かったのに。」


「だから、やばそうなときは止めてやっただろう?
1年以内にその放っておけないフェロモンが出ないようにしろよ。
まぁ、あんまりひどいようだったらおじさんに密告して転校も考えてもらわないとまずいかもな。」


「いやよ。せっかく髪の毛で悪く言われることがなくなったのに・・・。
フェロモンなんて知らない!なんで1年以内になんて・・・!?

・・・・・・!もしかして、咲が卒業しちゃうまで?」


「ま、まあな。俺のせいで家に彼氏を連れてくることもできないだろうし、悪いけど・・・。」


「そんなの考えたことないよ。
咲だって知ってるでしょ。私は料理もうまくないし・・・ママはお小遣い稼ぎのパートしかやってないから家にけっこういるし。

咲といっしょに暮してるなんてみんなに知れたら、私が学校の女子から殺されちゃうよぉ!」