雪美の通う大賀山高校は地元ではトップレベルの学力と校風で知られている学校だった。

当然、校則もきびしく服装や髪形も毎日正門でチェックされる。

門の前で一礼をして門の近くにいる数人の先生にも挨拶をして、それぞれの教室へ向かう。


その途中、風紀違反している者がいれば風紀委員長がチェックをし、すぐに正せるものは正し、時間のかかることは期日を本人に約束させている。


雪美は学校見学をしたときに、圧倒されてびくびく震えながら正門を通ったが通学するようになってもう1週間になるというのに、まだ震えていた。


「止まりなさい!君は新入生だね。
入学のときから気になっていたんだけど・・・。」



「ひっ・・・あ、私は、私は何も違反なんかしていません!
絶対、違反していませんから、失礼します。」



「おい、待てっ!」


雪美は風紀委員が追いかけて来るのが、怖くて職員室へ飛び込んで先生に助けを求めようと思ったのだった。


(なんで?もしかして私の髪の毛が赤いかも・・・先生なら、ちゃんと説明してくれるはずよ。私はアメリカのクォーターだもん・・・。)



職員室の入口があと1mというところまできたところで、職員室から大きな荷物を抱えて出てきた人物と正面衝突してしまった。


「きゃあーーーーー!」


小柄な雪美ははじきとばされるように、倒れお尻を強打した。


「いたたた・・・うう・・・。」


後方から雪美を追いかけてきた風紀委員長と思われる体の大きな人物が雪美に駆け寄ると


「そんなに怖がらないでくれない?命をとりにきたんじゃないよ。」


「えっ・・・」


そして、ぶちまけた荷物の書類を黙って拾っている人物がチラっと雪美をにらんだ。


「えっ、えっ・・・す、すみません。追っ手に追われて職員室に逃げ込みたかったんです。ごめんなさい・・・。」



「廊下を勢いよく走ってきて事故を起こした。これは重大な違反だ。
生徒手帳を出しなさい。それと放課後生徒会室に取りにくるように。」


「わっ!私は・・・追われて・・・」


「廊下を走ってはいけないのは小学校から言われているはず。
それは公立であってもそうでしょう。
そこまで逃げるのは追われる理由にこころあたりがあったせいもある。

竜輝、手帳を取り上げて。」


「う、うん。なんとなく、すぐに説明しなかった俺にも責任がないわけじゃないんだけど・・・ね。

手帳出してくれる?君の髪の毛が天然なものだと届けがあったから、確認したかっただけなんだよ。」



「そ、そうだったんですか。私、ずっと髪の毛のことで説明するのが嫌で、この学校は帰国子女も多くて特殊な見かけのコは特徴を貼りだしておいてくれるってきいたので入学したんですけど・・・。いたっ・・・。」


「竜輝、このコを保健室へ連れていってやって。
この荷物を片づけたら、代わりに俺が正門に立つから。」


「わかった。」