ケータイ小説 野いちご

運命みたいに恋してる。

運命のイタズラ

 あの劇的な再会と、衝撃の失恋から、数日経過した。


『柿崎さんのことは忘れよう』と心に固く誓ったものの……


 現実は、そう簡単にいっていない。


 あたしは現状、自分の読みの甘さと、軟弱な根性に歯ぎしりしている状況だ。


「それは、無理もないと思うよ? 七海ちゃんの責任じゃないよ」


 隣に座って慰めてくれる花梨ちゃんの優しい声が、しみじみと心に染みる……。


 今日もまた放課後、グチを聞いてもらうために、この秘密の場所にふたりで来てしまった。


 校舎裏の敷地内の端っこに、使われなくなったガラクタばかりを放り込んでいる、忘れ去られた物置がある。


 その小屋の裏と、隣の家との隙間に見つかりにくいスペースがあって、ここがあたしと花梨ちゃんの秘密の場所だった。


 ふたり並んでペタンと地面に座り込み、ヒザを抱えて話す内容はもちろん、お姉ちゃんのこと。


「一海さん、容赦も遠慮もないんでしょ?」


 そう同情気味に聞かれて、あたしは溜め息をついてうなづいた。


 そうなんだ。あたしにバレてしまった後、お姉ちゃんはすっかり安心しちゃったらしくて。


 いままで溜まってたぶんを、すごい勢いで一気に放出し始めた。


 柿崎さんとのこれまでの日々の、大切な思い出とか、デートの詳細とか、言葉、しぐさ、行動、思考にいたるまで。


 んもう次から次へと、とめどなく、限度なく、あたしに語ってくる。


 柿崎さんを忘れようにも、こうも毎日新鮮な情報が入ってくるんじゃ、忘れるに忘れられないって。


 お姉ちゃんのために、なんとか自分の気持ちを削除しようとしてんのに、そのお姉ちゃん本人が上書きしてくるんだもんなー。

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