正直、それはすごく寂しい。


あたしたちが手を繋いで生きてきた時間は、なによりも大切な宝物だったはずなのに……。


『もう、べつの人がいるからあなたは必要ないよ。さようなら』


そんなふうに手を離されてしまうの?


「あたしが今までお姉ちゃんを守り続けてきたんだもん……」


「一海を心配する気持ち、お母さんも同じよ。七海は七海で、いつも突飛なことばかりして心配させるし、大変だったわ」


お母さんがため息混じりに言った言葉に、おじさんが軽く笑った。


「うちも同じですよ。拓海はお人好しが過ぎるし、大地はいきなり化粧品に執着し始めるしで、どれだけ気を揉んだことか」


ちょ、ちょっとお母さん? 突飛なことばかりって、なによそれ。


あたしはね、お姉ちゃんを守るために、人一倍の行動力を養わなきゃならなかったんです!


大地が化粧品に執着したのだって、亡くなったお母さんの仕事を引き継ぎたいっていう、立派な志なのになあ。


憮然とするあたしと大地を無視して、お母さんたちは勝手に盛り上がっている。


「夫を亡くしてから、本当に心配なことの連続でした」


「わたしも、男親だけでの子育てが不安でねぇ。苦労しましたよ」


「とにかく、子どもの幸せのためにガムシャラに頑張るしかなかったですよね」