オタオタしながらあっちこっちを見ていると、急に手首をつかまれた。

げっ、狐面。

「何をしておる。奥方様の元へ急がぬか」

ぐいっと引っ張って、あたしを連れて行こうとする。


あっちに行くって事は、こいつと一緒って事?

じゃ、やっぱりあっちは嫌かも!


「痛いよ、離してっ」

「早くしろ」

「イヤだってばっ」

「お前の意思など関係ない。奥方様の御意思が全てだ」


嫌も応もなし? 売られちゃう子牛な気分。

でもヤだよおぉぉ~~っ!

直感が『行くな』って叫んでる~~っ!


しま子があたしの嫌がる様子を見て、また牙をむき出した。

唸り声を上げて狐面を睨んでる。

やばっ、乱闘になっちゃうっ!


手を振り解こうとしたけど、ガッチリつかんで離してくれない。

もうっ! やっぱりこいつ、あたしの事好きなんじゃないの!?

う~~! 嫌だあぁぁっ!!


踏ん張って抵抗するあたしの反対側の手首を、誰かがつかんだ。



「離せ」

「・・・! 門川君!!」


門川君があたしの手首をしっかりと握り締めている。