「っ!」


 明道は目を覚ますと、ぐっと息を呑んだ。


 目の前に幻周が杉の木の如くたたずんでいたのである。


「やぁ、藤原 明道殿」

「幻周っ!」



 明道は牙を剥かんばかりの勢いで前に歩み出る。しかし、足が進まない。         
 よく見てみると、自分の身体が一本の太い木と共に荒縄で巻かれているのが分かった。

 明道は拘束されているのだ。


「渾沌を呼び寄せようとしていたらしいが、まことに残念でしたなぁ」


 いかにも皮肉っぽさを見せ付けるように、幻周はほくそ微笑み敬語を使った。


「あの程度の呪力の型代なぞ、所詮本物には及ばぬ」

「く・・・」

「『晴明の悪点』という少年を知っておるか?」

 
 幻周は突然聞きなれぬ異聞話を持ち出してきた。