翌日、早くからことり達はコンサート会場に向かった。

まだ朝早いと言うのに、スタッフ達が慌ただしく動いている。

ステージ裏では本番と同じ衣装を身に纏っているメンバーの姿があった。

ことりと彩乃は関係者しかいない客席に座っていた。


「陽君、かっこいいだろうなあ。」

隣の席で頬を少し赤らめながら彩乃は呟く。

思わず苦笑すれば、彩乃は表情を顰める。

「先輩もそう思いませんか!?」

「え、...まあ、うん。」

自分の兄を素直に恰好良いと言い辛く、言葉を濁せば彩乃は再び正面へと顔を向ける。



トントン、

ことりも前を向いたその時、二回肩を叩かれた。

振り向けばそこにはマネージャーの木村が立っていた。


「やあ、ことりちゃん。」

「き、木村さんっ」

思わず目を見開いて彼を見た。

「ことり先輩の知り合い?」

「知り合いっていうか...」


「初めまして。スカイのマネージャーの木村です。」

木村は彩乃に名刺を差しだし、愛想笑いを浮かべると彩乃も驚いたような表情をする。



「先輩、マネージャーさんと知り合いだったの!?」

「前に陽さんに用事があり、ご自宅に訪問したときに知り合ったんですよ。」

ね、と木村はことりを見た。

それにこくこくと頷けば彩乃は納得したようだ。


「ことりちゃん、ちょっと抜けれるかな?」

「あ、はい。」

少し行ってくるね、と彩乃に告げて席を立つ。

木村の後に続いて、会場の隅に移動した。