「わぁ、珍しい~~
 螢君の子?」

「……違いますってば!」

「ええ~~?
 でも、似てない~~?」

「全然、似てません!」

 そう、確かに否定したのに。

 取り囲んだ年配の奥様たちは、僕の声を完全に無視して嬉しそうに笑った。



 何がそんなに楽しいんだ!

 まったく、もう!



 いつも、近所のスーパーの安売り商品から、町内会の催しものの情報まで教えてくれる上。

 はては、煮物のおすそわけまでしてくれる、ありがたいご近所さんたちだ。

 一番初めに会った時は、ハニーの横にいる僕を胡散臭そうに見ていたけれど。

 慣れて無害だとわかると自分の息子のつもりで、何やかやと世話を焼いてくれるようになった。

 それが。

 子供のころから、父母の愛情っていうモノが縁遠かった僕にとって。

 いきなり増えた家族みたいだった。

 それは、気恥ずかしくも、悪くない気分なんだけど。

 今日も、直斗を連れて外に出れば。

 早速、祭り広場を歩く僕を捕まえて、楽しそうにいじって来た。

 どうやら彼女たちは、普段僕が連れ歩かない直斗の正体に興味しんしんみたいだ。

 違う、って言ってるのに『隠し子?』とか言って、からかってくる。

 あげく。

 直斗までノって「パパ~~」なんて言って来るもんだから、始末が悪い。
 
 どっと沸いた、楽しげな笑い声の渦に、僕は、すっかり、ゆでダコだ。

 おばさ……いやいや。

 年上のお姉さま達の追及と。

 火照った顔をごまかすように。

 直斗に「次は何を食うんだ!?」と聞けば。

 既に、緑色のりんご飴とフライドポテトを両手に持ってご機嫌な直斗は。

「かき氷!」なんて言いやがった。