【白斗side】


白を目にするとどうしても浮かぶ人がいる。
雪の白さとは違う白さだというのに、どうしてこんなにもちらつくのか。


…そんなことをオレでさえ思うのだから、きっと…。


「珍しいな、外を見つめて佇むなんて。」

「紫紀。」


振り返った先には濃い紫の長い髪が靡く。
表情一つ変えず、紫紀は言葉を繋いでいく。


「何かあったか?」

「…なーんにも。ただ、季節は確実に流れているなって思っただけだよ。」

「…そうか。」


近付くでも遠のくでもなくただ、紫紀はそこにいた。
オレと同じく、外を見つめながら。


「春ももう終わろうとしているな。」

「そうだね。桜が半分くらい散っちゃったし。」

「儚いな。」

「丁度オレもそう思っていたところだよ。
…どうしてなんだろうね、違う白なのに。」

「…雪とは違うな。桜の白さは。」


風が強く吹いている。
ただ、ただ強く。


その強さに負けて、桜の花びらは舞い落ちていく。
まるで雪のように。