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身体、が、マジ、笑えない、くらい、痛ぇ。



昨日までは痛くてもちゃんと動いていたのに、今じゃ身体が鉛みてぇだ。

朝起きた時、全然身体が動かなくて焦ったよ。ベッドから一生出られないかと思った。
 

やっぱ喧嘩慣れしてない平凡男子には、昨日のフルボッコ事件も大喧嘩事件もシンドかったってことだよな。


実際今、かなりシンドイし。昨日よりも今日の方が痛みも酷いってマジ最悪。今日は体育が三時限目にあるってのに。


しかも眠いしダルイ。たっぷり寝た筈なんだけどな。

家に帰ってすぐシャワーを浴びて、怪我の手当てした後、飯も食わないで寝たから睡眠時間は十二分にとったのに。


そういえば俺のボロクソになった姿を見て母さん達がかなり驚いていた。


何かあったのか、何か事件に巻き込まれたのかって昨日も今朝も大袈裟に騒いで質問攻め。



取り敢えず、適当に受け流してきた。



学校に登校した俺のツラを見た光喜や透も質問してきたけど、やっぱ受け流した。

言えないよなぁ。不良にフルボッコされましたなんて情けないことをさ。


身体がダルイってのに俺、頑張って徒歩で来たんだ。

本当は自転車で来たかったんだけど、俺の自転車はゲーセンに放置されているから。


今日の今日に限って徒歩なんてないぜ、マジで。


自転車盗られてねぇよな。撤去されてねぇよな。

盗られたら暫くは自転車通学できなくなる。


それは困るんだよ。

俺にとってチャリは最大の武器であり、かけがえのない相棒なんだから。


二度重い溜息をついて俺は、憂鬱と闘っていた。

いや愛チャリのこともあるよ。あるけど、愛チャリを貸した相手が、な。


肘ついて俺は利二の方を盗み見る。利二は光喜と話している。

話しているっていうか光喜が一方的に話しているみたいだ。利二の方は上の空。聞いているのか聞いてないのか微妙なところだ。


俺の視線に気付いたのか、利二がこっちを見てくる。

視線がかち合って俺はすぐさま目を背けた。メッチャ気まずさを感じる。俺達、昨日から口を碌にきいてないんだよな。

帰り際のあれだって俺が一方的に言っただけだし、会話っつー会話はしていない。


只ならぬ俺達の雰囲気に、光喜や透に朝から気を遣わせしまっている始末。


だってよ、朝、俺と利二が顔を合わせた瞬間、空気が重くなったんだぜ。

朝から暗雲が漂ったっつーの? 空気の読めない二人じゃないから、俺と利二に何があったかは聞かないでくれた。それが俺達にとって凄く有り難かった。