――茅那side――

ウソでしょ……言っちゃった。

社長に、『辞めます』って。

どうしよう……私、勢いで言っちゃったよ。



高瀬くんの部屋でドキドキなのに。

それさえも吹っ飛んでしまうくらいの衝撃だった。



ベッドに座る彼は、平然としている。


私の芸能生活が終わったことに関して、全然関心を持ってない。


たしかに、今、すごく仕事をするのがキツイ。

毎日毎日プレッシャーばかりで、朝起きるのも辛い。



でも……。



「もう……人前で歌えないんだ……」


スポットライトを浴びて、お客さんの視線を集めて。

のびのびと自由に。

思いっきり……歌うことが出来ない。



そう思うと……胸が痛かった。




「お前辞めたんなら、バックに入ってる仕事関係のものも、今ここで捨てろよ。俺がゴミとして出しといてやるから」 




そう言って、手を差し出す高瀬くん。