大学1年の春休みが舞台。



――蓮side――


――カシャン……


「もういい。今日は帰れ」

「えっ……高瀬くん?」



竹刀を床に置いた俺に、不安げに尋ねてくる茅那。


今は、俺の家の道場にて剣道の稽古中。

始めてから……約1時間ほど経つ。


だが、ヤツがまったく集中しないので、もう終わりにする。


「座れ」


突っ立っている茅那を床に正座させ、お互いに防具を外して、礼をした。

稽古を突然やめたことに、茅那は呆然としている。


「な、なんでですか? 私……何か」


自分に非があると思ったのか、俺に問いかけてきた。


「まったく集中してねえから。うわの空でやるとケガする。だから、今日は帰れ」


吐き捨てるように告げると、彼女はハッと、『ヤバイ』というような表情になる。


「ご、ごめんなさい……」


茅那は正座したままうつむいて、道着の裾を握りしめた。