――茅那side――


――ガヤガヤ……

雑誌の撮影が行われているスタジオ内。


パシャパシャという軽快な音と共に、私の仲間たちがシャッターを切ってもらっている。



そのスタジオ内の休憩スペースで、私は両手を握りしめて、ゴクリと喉を鳴らしていた。


目の前にいるのは、メンバー内で1番仲のいい実那。



「どう……かな?」


彼女のモグモグと動く口元に視線が集中した中で問いかけた。



「うん。おいしいよ!」



ゴックンと飲み込んだ実那が、笑顔で答えてくれる。



「ホント?」

「本当! おいしくできたじゃん!」


ニッコリと微笑む彼女の表情に、お世辞がないことを確信して、ホッと胸を撫で下ろした。



あ、皆さん。お久しぶりです!


私、工藤茅那。一応、BKN48っていうアイドルやっています。


今の会話はね、実那に味見してもらってたんだ……本命チョコの。


そう、今日は2月14日。聖バレンタインデーです!


私が渡す相手は……もちろん、高瀬くんっ!


零ちゃんにリサーチしたけど、高瀬くん甘いもの食べられるって聞いたし、嫌いではないと思うんだ。


私が作ったのは……ブラウニー。


高瀬くん食べてくれるかな?


「これなら問題ないわよ。自信持って渡して来なさい」

「はいっ!」


実那からエールをもらい、警察官のように敬礼して返した。