ケータイ小説 野いちご

Garden3

告白


先生の腕、毛深いな。

こういうとき、笑えてくるんだ。

うっすらと、そんなことを思った。

先生が、丁寧に言葉を選んで説明していたのを、聞き流した。


一番最初に、口から出た言葉は

『先生、バイトは辞めなきゃダメですか?』

だった。


一瞬、言葉をなくした後

『体に負担をかけることはなるべく控えてください』

なんて、遠回しな言い方をされた。


どうして、死ぬ気か?って言わなかったんだろう?

そうすれば、少しはあたしにも理解できたかもしれないのにね…


心の中でだけ呟いて、病院を後にした。



家に帰るのが苦痛で、そのまま電車に乗った。

こんな状態でも、知らない場所へは行けないことを自嘲しながら、

赤い電車が動きだすのを待った。


終点まで行ったら、電話しようそれだけ決めて、

端っこの座席に座って、手すりに寄りかかった。



ケータイを片手に、電話帳を開く。

名前を一人ずつ見ながら、

今、自分が死ぬんだ、と言ったらどんな顔をするか想像した。

頭の中だけで相手を傷つけて、記憶を消去した。

一緒にメモリも消去した。


八人目で、指が止まった。


メールを開いて、返信ボタンを押す。


助けて、と打って消した。

あたし、病気みたい、と打って消した。

今までありがと、と打って消した。

愛してるよ、と打って消した。


たまらなくて、ケータイを閉じた。



言えない。

言えない。

何も言いたくない。

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