―張り巡らせる―


「神川プロデューサー!」


ちょうど車から降りてきた神川を白石が見つけた。


「良かった。探してたんですよ。奈桜さんのマネージャーと連絡つきました」


走って来た白石は息を切らしている。
バタン、と強く車のドアを閉めると神川はうつむき気味にニヤッと笑った。


「そうか。で、奈桜は?」


ネクタイを外しながら歩いて行く。


「はい。それが…今日はコンサートのリハが夜中まであるそうで。合間は全て雑誌の取材が入っていて時間が全く取れないそうなんです」


歩くのが早い神川の後ろを、遅れないように早歩きになりながら答える。


「白石ちゃん、奈桜のスケジュールなんてどうでもいいの。今のZに時間がない事はバカでも分かる。…奈桜だ!奈桜だよ。アイツだってトイレに行く暇位あるだろ?マネージャーに言って、電話させろ。いつになってもいい」