『むむむー…』



鏡に映る自分を見つめて眉を顰めること、数十分。



さっきからずっとこの調子で、鏡の前に立ちながらクローゼットからある服全てを片っ端から取り出し、あれでもない、これでもない、そう次々と身体に合わせていくあたし。



たくさん服はあるはずなのに中々しっくりくるのが見つからなくって、床やベッドの上には選ばれなかった服達が虚しく横たわっていくばかり。



昨日の夜の内に選んでおけば良かったんだけど。



だけどお風呂から上がればイブから着信が入ってて、掛け直してそっから電話に出たイブと《壱翔君どうだった!?》から始まった乙女トークに火が点いちゃって。



着ていく服を選ばずじまいに結局、電話を切って寝たのが深夜を軽く越した時間になってしまったのだ。



おかげで慣れない早起きもしたせいか寝不足だよぉ…。



ふわ…っと欠伸を一つ零せば、よしっ!



眠気を飛ばし自分に喝を入れ、再びどれにしようかとまだ合わせていなかった服に手を伸ばしてそれを取り、鏡の前に立った瞬間。



ガチャリ。



そんなドアが開く音がして、瞳を鏡から音がしたドアの方へと向けると、そこにはスウェット姿でハチミツ色に寝癖を付けた弟一人。



「朝から何暴れてんの。ドタバタうっせー」