──早朝、一人の青年がベリルの前にやってきた。

 この顔は覚えている、用具の準備をしていたなかにいた男だ。体格はあまり良いとは言えないものの、機材を組むのには慣れている様子だった。

 以前、その関係の仕事に就いていたのかもしれない。

「──っあの」

 声を掛けたあと、黙り込む。

「なんだね」

 ベリルは腰を落としたまま、ブラウンの短髪と同じ色の瞳を見上げた。

「あ、の──僕たちは、本当に未来が心配なんです。世界はまとまるどころか、国家間での(いさか)いは増えるばかりで、その──」

 すぐに言葉が出てこなくなった。

 考えた末の声かけではなかったのだろう。青年の目には、声を掛けたことに少しの後悔が浮かんでいた。

 それでも、言わずにはいられなかったといったところだろうか。