「おはよう」

 通路でハロルドに会ったトラッドは、朝らしく陽気に挨拶をした。ハロルドはそれに無言で応えて先を歩く。

 ハロルドはふと、トラッドを一瞥する。

「深夜にベリルと話していたな。何を話していた」

 施設には、あらゆる場所に監視カメラが設置されている。もちろん、ベリルを監視するためのものだ。

 モニタールームも完備され四六時中、必ず一人はカメラの映像を監視している。

 できる限りベリルとは距離を置き、単独で会う事も禁止されている。

 それほどに、油断ならない相手であると教え込んでいる。

 しかれど、ハロルドの息子にベリルと話したいと頼まれて拒否できる同志はいない。