数分後、ベリルの服はまだ湿り気を帯びているが、トラッドはさっそく会話を始める。

「人類がここまで発展してきたのは、戦争のおかげだと言ってもいい。けれど、父さんはもう争いは必要ないと思ってる」

 どんなに否定しようと、戦争が人を駆り立て、様々な物を造り出してきた。

「人が大勢死ぬことと、文明の発達は区別しなきゃね」

 そこを一緒くたにすると本質が見えなくなる。人の生き死については倫理観だ。必ずしも人が死ななければ発展しない訳でもない。

 ただ、そうすることにより、人類が進歩する速度は確実に速くなる。でもそれは、これまでのはなし。

「すでに戦争はナンセンスで、これからの人類には正しく導く者が必要なんだと考えた」

 そんなことは何度も聞いたと言わんばかりに、ベリルは顔をしかめている。

「君は、父さんの論の全てに反対という訳じゃあないんだろ」

 認めている部分もあるはずだ。