ケータイ小説 野いちご

あやつりの糸

◆強制的な演説
支配者

 しばらくしてハロルドが再び訪れた。

「もう大丈夫なの?」

 トラッドが尋ねるとハロルドは小さく頷く。

「うむ。大事ない」

 老人はベリルを見つめ薄笑いで口を開いた。

「君はこのまま私が死ねば事なきを得ると思っているのだろうがその考えは甘いよ。私が死ねば息子がお前を説得する。息子が死ねばまた次の……」

「だが永遠ではない」

 ハロルドの言葉を切ってベリルが静かに応えた。

「人は同じ意志を保ち続ける事は難しい。そう思うから拒否し続ける私に演説まがいの“イカれた話”をするのだろう? それが同一人物でないのなら尚のことだ」

「……」

 ハロルドはピクリと方眉を上げた。

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