ケータイ小説 野いちご

あやつりの糸

「君は真に支配者に相応しい。その証拠が不死だ。そして、忘れてはいないだろうね。己がミッシング・ジェムであるということを」

 ──人類の中にありながら、人類の歴史にあってはならない存在──それをミッシング・ジェムと呼ぶ。

 見つめてくるハロルドにベリルは静かに視線を外した。

 忘れる訳がない。自身がいかにして生まれたのか、許されるはずのない存在であることも、不死などどうでもよくなる程に理解している。

 打ち明けることの出来ない真実を抱えたまま、私は生きなければならない。いつか、それが珍しくもない時代が訪れるまで──

「心配しなくとも、君を造り出した国は、もうすぐ終焉を迎える」

 喜びたまへ──ハロルドの歪んだ口元にベリルは嫌悪を募らせた。





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口気(こうき)
1 口から出る息。気息。
1 ものの言い方。くちぶり。口吻 (こうふん) 。

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