ケータイ小説 野いちご

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あやつりの糸

◆張られた糸
胸の痛み

 ベリルは誰もいない部屋で1人、壁に背中を預け片膝を立てて考える。

 暗い室内に電子音だけが響いていた。

 いつもの彼ならどうやって逃げだそうか算段している頃合いなのにその気配は無い。

「……っ」

 何かを思い出して苦い表情を浮かべる。

 自分がどうやって生まれたか……膨大な知識をどうして得られたか。

 それを思うと心の傷がうずいた。

“ミッシング・ジェム”という言葉は17歳の時に知った。

 そして自分が今まさにそういう存在であるのだと確信した。

『知られてはいけない真実』

 いつ死ぬとも限らない傭兵という仕事に、そんな真実は早くに墓に持っていけるだろうと思っていた。

 しかし25歳の時にある出来事がきっかけで不死になってしまった。

 彼は永遠にその真実を背負わなければならなくなった。

『人類の理想』──そんな言葉がベリルの脳裏をかすめる。

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