ケータイ小説 野いちご

吸血鬼の花嫁

第一章





「できた…!」

「おおおおお!!」


私の声に、ルーが感激した勢いで抱きついてきた。

そうして私の背をばんばんと叩く。


「い、痛いわ、ルー…」

「お疲れ、お疲れ花嫁!」


寝る間を惜しんで一週間と三日、お揃いの男女の衣装一式がなんとか完成した。

見本よりも装飾が幾分地味だが、そこは目をつむってほしい。

こんなにもリボンとレースの多い衣装を作るのは生まれて初めてだった。

私が四苦八苦していたのを知っているルーは、私よりも完成を喜んでいた。


「早く着て驚かせてやりたいけど、でも、ちょっと俺たち寝た方がいいな……」

「うん…」


私は言うまでもなく、付きっきりだったルーも疲れたような顔をしている。

特に縫いの作業に入ってから、ルーはほとんど眠っていなかった。

私の寝ている間に縫い間違えたところをやり直していたらしい。


「じゃあ…また明日…」

「あぁ、おやすみ…」


その日は夕方に寝たにも関わらず、夢も見ず眠り続け、起きたのは次の日の昼だった。



翌日。

私とルーは着替えて食堂に吸血鬼が来るのを待っていた。

ルーが家妖精に連れてくるように頼み、準備は万端である。

なかなか様になっているルーとは違い、私は飾りの多い衣装は着慣れていなかった。

自分でつくったとはいえ、似合わないと笑われたらどうしようと、少しだけ不安になる。

だけど、誰よりも一生懸命なルーのためにも、吸血鬼の喜ぶ顔が見たかった。



と、青髪の吸血鬼の存在を感知する。だんだんとこの部屋へ近づいてくるのが分かった。

そう思っているうちに扉が開かれる。


「来た!」


ルーは急いで吸血鬼の元へ駆け寄っていった。


「よお、吸血鬼。どうだこれ」


じゃーんという風に、ルーは両手を広げて見せる。


「花嫁に作ってもらったんだ。懐かしくないか。あんたが昔、人と過ごした頃の衣装だろ」


吸血鬼は表情を変えず、ルーを見下ろしていた。そして私を一瞥し、またルーに視線を向ける。


喜ぶにしては長すぎる沈黙の後、端正な眉が僅かに歪んだ。

不快さを示すかのように。




< 71/ 155 >