「できた…!」

「おおおおお!!」


私の声に、ルーが感激した勢いで抱きついてきた。

そうして私の背をばんばんと叩く。


「い、痛いわ、ルー…」

「お疲れ、お疲れ花嫁!」


寝る間を惜しんで一週間と三日、お揃いの男女の衣装一式がなんとか完成した。

見本よりも装飾が幾分地味だが、そこは目をつむってほしい。

こんなにもリボンとレースの多い衣装を作るのは生まれて初めてだった。

私が四苦八苦していたのを知っているルーは、私よりも完成を喜んでいた。


「早く着て驚かせてやりたいけど、でも、ちょっと俺たち寝た方がいいな……」

「うん…」


私は言うまでもなく、付きっきりだったルーも疲れたような顔をしている。

特に縫いの作業に入ってから、ルーはほとんど眠っていなかった。

私の寝ている間に縫い間違えたところをやり直していたらしい。


「じゃあ…また明日…」

「あぁ、おやすみ…」


その日は夕方に寝たにも関わらず、夢も見ず眠り続け、起きたのは次の日の昼だった。



翌日。

私とルーは着替えて食堂に吸血鬼が来るのを待っていた。

ルーが家妖精に連れてくるように頼み、準備は万端である。

なかなか様になっているルーとは違い、私は飾りの多い衣装は着慣れていなかった。

自分でつくったとはいえ、似合わないと笑われたらどうしようと、少しだけ不安になる。

だけど、誰よりも一生懸命なルーのためにも、吸血鬼の喜ぶ顔が見たかった。



と、青髪の吸血鬼の存在を感知する。だんだんとこの部屋へ近づいてくるのが分かった。

そう思っているうちに扉が開かれる。


「来た!」


ルーは急いで吸血鬼の元へ駆け寄っていった。


「よお、吸血鬼。どうだこれ」


じゃーんという風に、ルーは両手を広げて見せる。


「花嫁に作ってもらったんだ。懐かしくないか。あんたが昔、人と過ごした頃の衣装だろ」


吸血鬼は表情を変えず、ルーを見下ろしていた。そして私を一瞥し、またルーに視線を向ける。


喜ぶにしては長すぎる沈黙の後、端正な眉が僅かに歪んだ。

不快さを示すかのように。