その日の夜。



私はいつものお店ではなく、ある男の元へ来ていた。



「澤木伊織、まさかお前から連絡が来るとは…な。」



「御呼び立てしてすみません…国見社長。」



私は目の前の男に瞳を上げた。



この間と違う着崩したスーツ姿の社長。



ラフなスタイルは彼の爽やかさを引き立てる。



「悪いが高級な店は嫌いだ。居酒屋に入るぞ。」



「お任せします。」



私が答えると柔らかく微笑み返す社長。



「出来れば、敬語も止めてほしいんだが。」



「わ…かった。」



夜のライトが彼を更に柔らかく見せ、私は掠れた声を喉から絞り出した。