雲竜との戦争の準備は順調だった。……つっても、俺はあんまり何にもしてないんだけど。だって俺が何かしようとすると、弘人も風吹も響生もみんながそれを阻止してくるから。


「――風吹、作戦はどうなってんだ? 俺にも案を……」

「――それは今調整中です~! 凪さんには決まったらお知らせしますね~」

「じゃあ響生、みんなと一緒に戦闘訓練を……」

「そっちは俺がやってますからご心配なく。総長はいつも通りどっしり構えていてください」

「……弘人ぉ……!」

「あ、凪。暇なら暑いからアイス買って来て」


 ……まあ、総長自ら動かなくても大丈夫なくらい優秀な幹部が揃っている、っていうのは喜ばしい事なんだけど。何となく納得いかない。


 ――その日の午後も夏の暑さが厳しい日だった。

 俺は準備に励む仲間の為に、裏のコンビニでアイスを買って倉庫へ戻る所だった。……幹部室で暇してたら弘人に買ってこいって言われたんだけど。俺はパシリか!?

 だけど倉庫へ戻ると、何やら騒がしい事件が巻き起こっていた。

 倉庫の出入り口の扉の前に人だかりが出来ていた。何かを中心にして、それを取り囲むように。近くにいたヤツに持っていたアイスを預けると、俺は中心へ分け入った。