×月×日

「お父様、お母様。 安心して下さい。 ロージーはきっと立派なロナウドの妻になってくれます」

「リリィ……。 私達は本当にお前が目覚めた時、嬉しかったのだよ。 どの医者も絶望的な事しか言わないのだから。 全く諦めてなかったわけではないのに、その言葉は私達を説得するにはじゅうぶんで……いや、最後がこんな言い訳ばかりではいけないな」

 お父様は一夜明けても気持ちの整理がつかなかったのだろう。 それはきっとお母様も同じ。

「リリィ、私の可愛い娘リリィ。 何も言いたくないわ、言葉にしてしまったら本当にお別れのような気がしてしまうもの」

 そう言って私を包んでくれる。
 それは遠い昔、まだ小さな世界の温もりだけを感じていられた頃の優しい匂いがした。

「お母様、身体に気をつけて下さいね。 あまり心配ばかりしてはいけませんよ」

 たった三年しか経っていないのに、お母様の心身の疲労が伝わって来る。