その日のカレーは味がわからなかった。


炒められたタマネギが口の中に入るたびに妹がこれを万引きしていたときの光景がよみがえってくる。


思わず吐き出してしまいそうになり、急いで飲み込む。


「どう? おいしいでしょう? 隠し味はチョコレートなんだよ」


妹は自信満々に聞いてくる。


「う、うん。おいしいよ。料理上手になったね」


リナはぎこちなく笑って答える。


母親はまだ帰ってきていないから、今リナは母親代わりだ。


もっとも、本当の母親なら自分の娘が万引きしているのを目撃したときに注意しているかもしれない。


そんな勇気は今のリナにはまだなかった。


「ごちそうさま」


リナは丁寧に手をあわせて席を立った。


食べた後の片付けはリナの仕事だ。


シンクに向かって立っていると、妹と弟がキレイに平らげた空のお皿を持ってきた。


その後、妹が弟にテレビを見る前にお風呂に入るように促している。