何度目かのため息をつきながらフラーっと次の角を曲がろうとした、その時──────────

「今からでも間に合うでしょ? お父さん」

私は聞き覚えのある声にピタッと足を止める。

この声……優羅くんのお姉さん?

それに、お父さんって……。

「しつこいぞ。その話は終わった話だ。それに、もう遅いに決まってるだろう。式典の準備は整ってるんだ」

「まだ式典は始まってないでしょ? まだ遅くない。優羅だって納得してないじゃない」

お姉さんの声は普段より少し荒々しい。

お姉さん、お父さんを説得してるんだ……。

優羅くんのためにすっごく必死で。

私はギュッと拳を握りしめた。

「お父さんは優羅の気持ちを何も考えてない!」