side咲良


魔界にやって来て1週間が経った。
私は今日も栄養失調で倒れることなく、元気にやっている。

これも全てミアとユリアさんのおかげだった。
決して今、ルールの為に共に晩ご飯を食べている5兄弟のおかげではない。

むしろ彼らは私をずっと放置している。
初日からずっと。
…エドガー仕事しろよ。
まあ、放置されている分自由にできるからいいんだけど。


「咲良、今日も食欲がないのか?」

「まぁ、うん。そう」


今日も今日とて一切晩ご飯に手を付けようとしない私を不思議そうに五男バッカスが見つめる。
相変わらず無表情なので何を考えているかわからないが逆に言えばヘンリーのような意地の悪さを感じず気分を害されることもない。


「じゃあ俺が食べる」

「…え?まだ食べるの?しかもその…」


ただでさえめちゃくちゃな量を1人で平らげているのにまだ食べようとするバッカスに思わず笑顔が引き攣る。
そのついでにこの料理たちのことを〝ゲテモノ〟と呼びそうになったがそれはぐっと堪えた。

この料理たちはあくまでヘンリーが私を思って好意で作らせている料理だから表立って悪口は言えない。